【後悔する間取り|2階LDKの失敗】2階LDKを活かせる条件「眺望・採光・狭小地」
- 2006年から今日まで注文住宅の会社に勤務
- 16年の実績を持つ現役建築士
- 土地探し→設計→現場管理→引渡しまですべての業務担当
今日も家づくりのお手伝いをしています!詳しいプロフィールはこちらから
注文住宅は間取りがある程度自由自在なので、こんな間取りにしたい、あんな間取りにしたいといろいろ要望を言われます。
その中でちょいちょい言われる要望が「2階LDK」
どうしてですか?と質問すると、返ってくる答えはだいたいこんな感じ。
- 2階LDKに憧れていた。
- インスタで2階LDKを見て。
- なんとなく良さそうだから。
まぁそれでもイイと言えばイイんですけど。
僕が設計するとき、特別な理由がない限り2階LDKを勧めることはありません。なぜなら、2階LDKはデメリットの方が大きいからです。理由もなく2階LDKを採用すると後悔につながります。
そこでこの記事では
- 2階LDKのデメリット
- 2階LDKを採用するとき
- 2階LDKを採用時の注意点
についてお話ししたいと思います。
2階LDKの間取りを採用したい人は、ぜひ参考にしていただければ幸いです。
2階LDK|4つのデメリット
念願叶っての2階LDK。2階LDKにしたせいで、と後悔する前に2階LDKのデメリットをご紹介します。
2階LDKのデメリット
- 夏暑い
- 階段の上り下りが大変
- 来客時に面倒
- 子供と話す機会が減る
それぞれ解説していきます。
2階LDKのデメリット①|夏暑い
1階LDKの間取りと比べ2階LDKの夏は暑いです。くつろぎ空間であるはずのLDKが抜群に居心地悪くなります。
僕は北海道に住んでますが、北海道の夏ですらエアコンは必須でしょうね。
2階LDKが暑くなる理由としては大きく2つあると思います。
- 太陽熱で屋根材が暑くなり2階が暑くなる。
- 2階は窓からの日射が侵入しやすい
屋根から熱が侵入して暑くなる
夏の日射の強さはみなさんご存じ。皮膚を突き刺すような日射の強さ。夏場は太陽高度が高く真っ昼間だと日影も少なく、暑さから逃れるように建物の中に駆け込んだ経験ありますよね。
それほど夏の日射は強力です。
そして住宅の屋根材として最も多く使われているのが「ガルバリウム鋼板」です。
強力な日射熱を受けたガルバリウム鋼板はビックリするくらい熱くなります。目玉焼きを作れるんじゃないかと思うくらいです。
そんなガルバリウム鋼板の熱が、2階の天井を通過して室内に伝わってくることで外気温よりも室内の方が暑くなることもあるんです。
窓から日射が侵入しやすい
みなさんご存知の通り、
- 太陽は東から登り西に沈む
- 太陽高度(太陽高さ)はお昼くらいに最も高くなる
- 太陽はお昼を過ぎると西に向かって沈んでいく
日射の観点では建物が高いほど周辺建物の影響を受けにくいことになります。ビルは高層階に行くほど日射が入りやすいですよね。
2階建ての住宅では1階よりも2階の方が周辺環境の影響を受けにくいので長時間日射を入れ続けることになります。
夏に日射を長時間入れるということは・・・暑くなるということです。
2階LDKのデメリット②|階段の上り下りが大変
家の中で最も利用頻度の多い部屋がリビングです。
利用頻度の多いリビングが2階にあると、必然的に階段の上り下りが増えます。
多くはリビングと同一階にダイニングとキッチンがありますので、さらに階段の上り下りは増えることになりますね。
そして日常生活で階段の上り下りが「しんどっ」と思う場面は意外と多いものです。
階段しんどって思うとき▼
- 買物袋をごっそり持って帰ってきたとき
- ぎっくり腰とかで足腰を痛めたとき
- 小さい子どもを抱えてるとき
- 寝坊して遅刻しそうなとき
階段の上り下りなんて慣れの問題!
そう言う人もいますが・・・そう思う人もいるだけ。
やっぱり階段の上り下りが無いに越した事はありませんからね。
2階LDKのデメリット③|来客時が面倒
普段いるのがLDK。テレビを観ながらくつろいでる時に
(ピンポーン)「三河屋でーす。」
なんて商店街の三河屋さんがやってくることがあるかもしれません。
いちいち階段を下りて用事が済んだらまた階段を上ってリビングに。
めんどっ。
しんどっ。
Amazonで買った荷物を持って階段上がるのもめんどくさっ。
「来客お断り」って張り紙でも用意しようかなって思うくらい2階LDKの来客対応はめんどくさいです。
2階LDKのデメリット④|子供と話す機会が減る
LDKの面積はどんなに少なく見積もっても最低16畳くらいは必要だと思います。(12畳でもいけるかな?いや狭すぎん?)
家事効率を考えれば、できればLDKと同一階に水廻りも欲しいところ。そうなれば寝室・子ども室は1階に配置することになります。
学校から子どもが帰ってきてそのまま1階の子供部屋に直行されたら寂しいですよね。
2階LDKを採用するとき|狭小地・採光・眺望
2階LDKって結構デメリットありますでしょ。
とはいえ、デメリットが多いから2階LDKは絶対やめるべき!と言うつもりはありません。
僕としては2階LDKを採用するしないは土地によると思っています。
例えばこんな土地は2階LDKの方が良いと思います。
- 狭小地
- 日当たりが悪い
- 2階の景色が良い
狭小地の建物は2階LDKが良い・・・場合もある
都市部では「間口5m・奥行20m」と、ウナギの寝所のような細長い土地が売地に出てたりします。
1階に絶対に必要なスペースとしては玄関・下足収納・ホール・階段、もしここに駐車スペース1台分、なんてことになれば、それだけで敷地がいっぱいいっぱい。
家族団欒のLDKが5畳しか取れません、みたいな。
狭小地に建てる場合の1階には
- 玄関
- シューズクローク
- トイレ・UT・お風呂
- 寝室・子ども室(寝る部屋)
これで2階LDKが広々と計画できます。
日当たりが悪い土地
2階LDKのデメリットである日射の影響が、日当たりの悪い土地ではメリットになる場合があります。
それは周囲の建物のせいで1階に全然太陽の光が入らない場合です。
敷地の隣に背の高い建物が建ってる場合だったり、隣の建物がこっちの敷地に寄せて建てている場合ですね。
- 太陽が入らなさすぎて病気になるんじゃないかと思うほど暗いLDK
- 日曜日の真昼間に電気を付けなきゃ過ごせないLDK
日当たりの悪い土地では2階LDKにすると採光が確保できる場合があります。
子ども室は明るくなきゃイヤだ!って人もいると思いますので、その時は2階LDK +2階子ども室という間取りに。
狭小地で2階の景色が良い
2階から見える景色が抜群に良い土地があります。
- 山、川、海が見える
- 目の前が公園など
川が近くにあると塀や柵などの遮蔽物が邪魔くさくて景色の見え方が変わります。でも2階には遮蔽物はありません。
また道路を挟んだ向こう側に良好な景色がある場合、歩道・道路の視線が気になって落ち着かないものです。
2階にはそういった遮蔽物や視線を気にしなくて済むところがメリットですね。
また2階は展望台のような感覚になるので、リッチな気分になりますね。
2階LDK+バルコニーなんて最高じゃないですか。
2階LDKの注意点|快適にする方法
とはいえやっぱり気になる2階LDKのデメリット。
これらのデメリットを取り払い、2階LDKをより快適にするためのポイントを3つご紹介します。
2階LDKを快適にする方法
- 動線計画
- 階段の計画
- 建物性能UP
動線計画に注意する
2階LDKをより快適に暮らすには動線計画が大きく関わってくると思います。
2階LDKで意識したい動線
- 水廻り動線(家事動線)
- トイレまでの動線
2階LDKと水廻り動線は同一階が望ましい
LDKと水廻りが同一階に無いと何回も階段を上り下りすることになります。
- 洗濯機を回すときに階段をおりて
- 洗濯機を回し終わったときにも階段をおりて
- お風呂に入るとき階段をおりて
- お風呂から上がった後に階段をのぼり
- トイレに行くときに階段をおりて
- トイレが終わった後に階段をのぼり
2階LDKの場合、水廻りも2階にあるのが望ましいですね。
トイレを一階にする場合は階段の近くが便利
2階LDKの間取りでは、水廻り全部を2階に配置するのが難しい場合もあります。
- 敷地の広さ
- 1階と2階のバランス
この2点から、LDKと水廻り全部を同一階にするのが難しい場合もあります。仮に1階にトイレを配置せざるを得ない場合、階段付近に設置すると便利です。
1日複数回利用するトイレの位置がLDKから遠かったら使い勝手が悪いですからね。
LDKに居て急にトイレに行きたくなったとき、階段を下りてすぐの位置だと使い勝手としてはまだ良い方。
階段おりて、廊下の突き当たりを左に曲がって・・・よりは階段近くに欲しいとこ。
階段の勾配を緩やかにする
2階LDKの方が暮らしが豊かになる場合は、積極的に2階LDKを採用した方が良いと思いますがやはり気になるのが階段の上り下り。1階LDKに比べると2階LDKの階段利用頻度は倍以上に増えると思います。
そんな階段を上りやすく下りやすい階段にするのが設計者としての優しさです。
古い家の階段って、階段っていうより梯子ですもんね。
階段を緩く計画すると階段の距離が長くなるので、家の床面積に対して階段が占める面積が増えてしまうので、梯子みたいな階段が多かったんでしょうね。
ちなみに、階段の勾配は建築基準法で決められています。
R:蹴上(一段の高さ) | 23cm以下 |
T:踏面(一段の奥行) | 15cm以上 |
バリアフリーに配慮した階段には次の基準があります。
「2R+T=55cm〜65cm」
蹴上が高すぎると一段一段の段差が高すぎるし、踏面が小さすぎると階段を下りる時に踏み外してしまう危険な階段になります。
2階LDKの場合、日常的に階段を利用することになるので蹴上は小さく・踏面は大きく、できるだけ緩やかな階段で設計すべきですね!
建物性能をアップする
2階LDKの場合、1階LDK以上に性能差が影響します。快適にそして安全に暮らすためにもマイホームは高性能であるべきです。
性能と言ってもいろんな性能があります。→【性能の優劣|何が大事?】快適なマイホームライフに欠かせない5つの性能
僕としては、特に大事なのが気密・断熱性能だと思っています。2階LDKを快適にするだけじゃなくて命に関わることでもあるからです。
何を大袈裟な!そう思ってる方はこちらの記事をご覧ください。自動車事故による死亡率よりも家での死亡率の方が高いんですよ。
参考までに
また、2階LDKの悩みの一つとして1階の防犯面が心配という人もいます。
歩くと音の鳴る砂利を家の周りに敷く人もいらっしゃいます。忍足でも「キュッキュッ」と音が鳴るので、音に敏感な泥棒対策には打ってつけですね。
ホームセンターでも売っているので、手軽にできますね。
2階LDKを採用する場合の3つの条件|まとめ
ただ意味もなく2階LDKを採用するのはオススメしません。
2階LDKにはデメリットがありますから。
2階LDKのデメリット
- 夏暑い
- 階段の上り下りが大変
- 来客時に面倒
- 子供と話す機会が減る
そんなデメリットいっぱいの2階LDK。絶対やめた方が良い!というわけではありません。
2階LDKを採用するしないは土地によると思っています。
2階LDKを採用した方が快適に暮らせる場合、それが次の場合です。
- 狭小地
- 日当たりが悪い
- 2階の景色が良い
わざわざ条件の悪い土地を選ぶ人は少ないかと思いますが、どうしても住みたい場所の条件が厳しい!
そんな時に2階LDKという考え方を持っていただければと思います。
そして2階LDKを採用するなら動線計画や建物性能には一層力を入れたいところです。
以上、参考になれば幸いです。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。