【家を少しでも安く建てたい】もっとも効率の良いコストダウンの秘訣
この記事はこんな僕が解説しています▼
- 2006年から注文住宅の会社に勤務
- 土地探しから間取提案、引渡しまで一貫した実務経験
- 営業、設計、現場監督をしている現役建築士
詳しいプロフィールはこちらからご覧ください!
- これから家づくりを始める人
- 土地探し中の人
- どこの住宅会社で建てようか悩んでる人
僕は家づくり中のいろんな人と話す機会があり、
どうしたらもっと安く家を建てられますか?
家づくりの予算はみなさん気になるところ。
住宅は仕様を変えるだけで何万円も何十万円も何百万円も金額が増えてしまいます。
逆に言えば仕様を変えるだけで、何万円も何十万円も、何百万円もコストを下げることができます。
コストダウンの方法はいくつかありますが、小さな金額を寄せ集めてコストダウンを図るよりも、1つ大きな金額の項目を下げた方がコストダウンの効果は大きいです。
5万円のコストダウンを10個集めるよりも、50万円のコストダウンをした方が、我慢の数も少なくなります。
本記事では、家を安く建てるときの注意点と家を安く建てる効果的な方法をお話ししたいと思います。
家を安く建てるときの注意点|失敗しないポイント解説
安く家を建てようと思うと、目先の費用を抑えることばかりに目を向けます。
目先の費用を抑えることに成功しても「快適性・安全性・ランニングコスト」など、住んだあとに不便・不快に感じたりと後悔につながる可能性があります。
快適なマイホームライフと思ったら、むしろ大失敗。
やってはいけないコストダウンにだけは絶対に手をつけないようにしましょう。
コストダウンを考えるときに気を付けるポイントを解説します。
性能をおろそかにしない
断熱性能の低い家はストーブで温めた空気をそのまま外に捨てる家です。(夏場は冷房した冷たい空気)温めた分だけ熱が外に逃げていくので、暖房費・冷房費がかさんでしまいます。
また気密性能が低い家は家中いたる所に空いてる隙間から、外の冷たい空気や暑い空気が入りまくる家です。
気密の良い家は家全体でハガキ1枚分の隙間しかありませんが、気密の悪い家は窓1台分の隙間が空いてるような家もあります。気密の悪い家はつねに窓を開けながら暖房・冷房しているのと同じ状態です。
気密が悪いと言っても壁に大きな穴が空いてるとかではなく、小さな隙間が家中いたる所に空いていて目に見える隙間ではありません。目で見て隙間を確認できるわけではないので住んでる人は気がつきようがありません。
空いてる場所
- 外壁周りのコンセント&スイッチ
- 窓の四方
- 給気口や排気口の周り
- 構造の柱と梁の接合部分
断熱性能・気密性能をケチると快適性に直結します。
夏暑くて冬寒い家なんて昔の家でしょ?
最近の家なら大丈夫だよね。
と思いがちですが、今でも性能をおろそかにするビルダーはたくさんいるから要注意です。
また断熱性能・気密性能の低い家は月々の暖房光熱費(ランニングコスト)が増えて、毎月の家計にも悪影響です。
性能が低い家のリスクはまだたくさんあります。
目先の費用を安くしたばかりに不快な家になってしまっては元も子もありません。
優先順位を絞る|やりたいことはTOP3まで
マイホームでやりたいことはたくさんあると思います。でもそのほとんどは予算の関係で諦めることになるはずです。
自分にとって絶対に譲れないポイントに優先順位をつけ、予算と相談して取捨選択することが大切です。
見た目のこだわりは後回し
せっかく新築で家を建てるんだからと言って見た目が良い物を選びがちです。
- グースネックの水栓
- カッコいいガスコンロ
- スマートなレンジフード
- 豪華なユニットバス
- 見た目がすっきりなタンクレストイレ
挙げればキリがありませんね。
その気持ちよく分かります。せっかくなら見た目の良いものがイイですよね。とはいえ見た目が良い物はだいたい高いです。
見た目の変更は工事が着工してからでも大丈夫!見た目は後回しでOKです。
家を安く建てる方法
それでは具体的に家を安く建てる方法を解説します。
坪数を抑える→床面積を小さくするのが最優先
たまに勘違いされる人がいて、小さい家は坪単価が割高になるから大きな家の方がお得、なんてことを言う人がいます。
たしかに坪単価で割り返せば小さな家の方が坪単価は高くなりますが、坪数が小さいぶん確実に建物価格を抑えることができます。
ラーメン屋さんでハーフラーメンにしたからといって半額にはなりませんよね。坪単価(ラーメンの場合は麺単価?)は標準サイズと比較すると割高になります。
坪数を小さくすると坪単価は高くなりますが、トータルの費用を比較すれば確実に安くなっています。
こんなイメージです▼
- 坪単価100万円×25坪=2500万円
- 坪単価90万円×30坪=2700万円
坪単価は高くても床面積が小さいほど安く建てることができます。
比較するのは坪単価ではなくトータル費用です。
床面積を小さくするにはデッドスペースを有効活用
床面積を小さくするにしてもやみくもに部屋を小さくするのでは、ただただ部屋が狭くなるばかり。
LDK・水廻り・個室などの部屋を小さくするのではなく、収納スペースを見直すことを考えます。
実際に収納スペースを削減するのではなく、床面積を小さくするのに有効なのは収納スペースを工夫することです。
具体的にはこんな方法があります▼
- 階段下を収納スペースに
- 壁に埋め込むニッチ収納
- ロフトの活用
床面積を小さくするには
デッドスペースを有効活用するのが効果的です。
家の形はシンプルに→総2階が理想
30坪の総2階と30坪の平屋では30坪の総2階建ての方が安くなります。
その理由は、
30坪の平屋では基礎も屋根も30坪分必要になりますが、15坪+15坪の総2階建てなら屋根も基礎も半分の大きさで済みます。
詳しくは平屋建ての記事で解説しています▼
また家の平面形状が凸凹しているよりも四角形の方がコストは安くなります。
建物の飛び出た角を出隅(ですみ)といい、外壁の出隅を仕上げるのに専用の部材だったり手間がかかったりするので、出隅が多いほど手間や材料費が多くかかります。
家の形をシンプルにそして、できるだけ総2階建てとするのが安く建てる方法です。
総2階建ての間取りは2パターン
僕たち設計士が考える間取りは、ベースになるのは建主さんの要望です。
要望次第では総2階では計画できない場合もあります。
むしろ使い勝手を重視した間取りは総2階どころか平屋建てor1階に2階がちょこっと乗るような間取りがほとんどです。
生活スタイルを考えると、
- リビング・ダイニング・キッチンは1階の方が便利そうだし
- キッチンと洗濯室は近接させたいし
- 当然玄関とシューズクローゼットは1階になるだろうし
こんな感じで、使い勝手の良い間取りを考えていけば平屋もしくは平屋ベースの家になっちゃうんですよね。
でも、寝室とか子ども室はべつに2階でいいよね!
と言ったところで、
せいぜい2階の広さは7,5坪~10坪程度(15畳~20畳)の広さです。
総2階建てにするには5坪分を2階に配置しなければいけません。
これらを踏まえると、総2階建てにするなら間取りはおおよそ次のパターン。
1階→玄関・シューズクローク・水廻り・個室(寝室or子ども室)
2階→リビング・ダイニング・キッチン・個室(寝室or子ども室)
もしくは、
1階→玄関・シューズクローク・リビング・ダイニング・キッチン
2階→水廻り・個室(寝室・子ども室)
個室は1階だったり2階だったり、家の大きさによって臨機応変に分かれると思いますが、だいたい総2階建ての間取りは上記の2パターンが基本になります。
施主支給を活用する
ダイソーで商品を買うときに経費を払っているし、TOYOTAの車を買うときにも経費を払っています。
物を買うときに経費がかかるのは当然でそれは家でも同じこと。
できるだけ費用を抑える方法として施主支給を活用するのも有効手段です。
注意|支給品は余計に費用がかかる場合がある
とはいえ何でもかんでも施主支給はいかがなもの。
引き渡しが終わって実際に家に住んでからのトラブルは次のような流れになります。
通常の流れ
- 建主さんがビルダーに連絡
- ビルダーが訪問・現地確認
- ビルダーが関連業者に連絡
- 関連業者の対応(修理or交換)
②を飛ばして直接関連業者に連絡することもあります。
建主さんに過失がなく製品の不具合だった場合は無償で交換する形がほとんどです。
建主さんの過失は、ぶつけたとか故意に壊した場合ですね。
ところが施主支給の場合そうはいきません。
①〜③の流れは一緒ですが関連業者を呼んで修理する場合、もし製品の不具合によるものなら建主さんが販売元に連絡することになります。
- 販売元によって対応が千差万別(ネットショップの場合、対応がお粗末な業者がいる)
- 保証が切れてた場合、一切対応してくれない
- 不具合対応時、支給品による不具合だった場合はビルダーから費用を請求される可能性あり
施主支給の場合、基本的に建主の自宅に商品を届けてもらい、傷がないか不具合がないかを検品して現場に直接運んでもらうことになります。
要するに、本来僕たちビルダーがチェックすることを建主が自分でやることになります。
製品の不具合があった際は、建主さんがメーカーに問い合わせて不具合のやり取りをすることになり、販売元から「弊社は製品チェックしているので対応しかねます」なんて言われた人もいるようです。
内心、こういうことがあるから施主支給はやめたほうがいいのにって思ってます。
支給品の場合、僕たちビルダーは何もしてあげることはできません。
施主支給にはまだまだたくさんのリスクが伴うので、別記事でご紹介することにします。
いずれにしても施主支給は建主さんにとって必ずしもメリットがあるわけではありません。
支給品については工事担当者と相談しながら進めてください。
水廻りは1階+近接させる
2階水廻りの間取りは給水管・排水管の配管距離が長くなるので、設備工事の費用が高くなります。
できるだけ配管距離が短くなるように1階に水廻りを配置し、なおかつ洗濯機・ボイラー・お風呂場・トイレ・キッチンはできるだけ近接した位置にする方がコストダウンできます。
洗濯機とボイラーはまとめて排水しよう、とできるので配管費用を抑えることができます。
また節水効果の高いタンクレストイレ。これを2階に設ける場合は、水圧不足による汚物や紙詰まりが生じやすくなってしまうのでブースターと呼ばれる加圧装置が必要になるケースもあります。
敷地目の前の道路に埋まっている給水本管の圧力によって不要だったりしますが、万が一に備えて2階にタンクレストイレを設置する場合はブースター内蔵の便器にすることが多いです。
もちろんブースター付きのタイプはお高くなりますね。
住宅価格の値上がり幅|10年前と比べて5%以上UP
僕が入社した2006年時点では、ローコストと言われているビルダーの坪単価が50万円代、大手ハウスメーカーの坪単価が70万円代くらいだったと思います。
2022年12月現在、ローコスト住宅でも坪単価70万円を超え、大手ハウスメーカーの坪単価は100万円を超えるところもあるそうです。
増税だけで5%の値上がり
5%だった消費税は、2014年4月から8%に上がり2019年10月から10%に上がりました。
増税の5%分のコストUP分って大きいですよね。
3000万円の家を建てる場合
- 10年前に建てた人は3150万円
- ちょっと前に建てた人は3240万円
- これから建てる人は3300万円
10年前に建てた人とこれから家を建てる人では、消費税の増税分だけで150万円もの差があります。
その他の要因|職人不足・ウッドショック・円安など様々
他にも住宅価格が値上がりしている理由はたくさんあります。
- 2021年3月頃から始まったウッドショックで木材価格が高騰
- 2022年ウクライナ戦争によるロシアへの経済制裁
- 慢性的な職人不足に、エネルギー価格の高騰
家の値段はどんどん上がる一方です。
値上げは悪いことばかりじゃない
家族が増えたり環境の変化だったりで、これから家づくりをする人だって未だにたくさんいます。
値上げの事実を知ると「もっと早く家を建てるべきだったなぁ」と後悔したり、むしろ知りたくなかった、と思う人の方が多いかもしれません。
しかし住宅価格が値上がりしているのはネガティブなことばかりではありません。
家の値段が高くなっているからこそ、本当にやりたいことと不要なことが洗い出され、より洗練されたマイホームを建てることができると思っています。
希望のご予算に合わせた提案をするのが僕たちプロの仕事です。
とはいえものには相場があります。まずは、ご予算に応じて提案してくれる住宅会社を調べることから始めてみましょう。