【北海道の断熱性能|断熱等級に迷ったら等級5】断熱等級をプロが徹底解説!
このブログは、
注文住宅の会社に勤めるサラリーマン建築士の「けんちくん」が、17年の実務経験を基に、家づくりのいろんな疑問にお答えする。
そんなブログになっています。
2023年現在、断熱性能にこだわって家づくりをされる方が増えてきた印象です。
断熱性能を意識する人が増えてきた一方で、断熱レベルをどの程度にするのが良いのか決めかねている人も多いのではないでしょうか。
断熱等級は高いに越したことはないよね!
断熱性能が大事なのは分かるけど、その分お金がかかっちゃうよね。
適度な断熱レベルってどの程度なのかな。
断熱等級は1〜7の7段階があり、等級7が最高等級です。
熱計算のソフトを用いて試算すると、断熱等級が1等級ずつ上がるにつれて年間暖冷房費(ランニングコスト)の削減ができます。
とはいえ、断熱等級7を目指すには断熱工事にトータル200万円〜300万円くらい、下手したらもっと高額な費用がかかります。
費やした費用を回収するには100年以上かかる計算になります。
個人的には断熱等級6または断熱等級5で良いと思っています。
コスパを無視して「断熱等級7」という最高等級への強いこだわりがある人が目指す数値という解釈で良いと思います。
本記事では17年以上注文住宅の会社に勤める僕が断熱等級について、詳しく解説したいと思います。
断熱等級は正確には「断熱等性能等級」と言いますが、ここでは一般的に呼ばれている「断熱等級」という表現でお話を進めていきます。
「断熱等級」は家の断熱レベルの指標
断熱性能が高い家と低い家の違いがイマイチよく分からない人に向けて、決定的な違いはコレです。
夏は暑さを遮り、冬は寒さを遮る。
冷房時は涼しい室温をキープし、暖房時は暖かい室温をキープしてくれるのが断熱性能の高い家です。
外気に影響されないのが断熱性能の高い家の特徴です。
ビルダーが一般ユーザーに対して、口を揃えて言うセリフがあります。
「弊社の住宅は断熱性能が良いから暖かいですよ」
住宅展示場やビルダーのモデルハウスに見学したことのある人なら一度は聞いたことがあると思います。
このざっくりとした「暖かい家」を数値化したのが断熱等級になります。
ミシュランの星みたいなもので、
「あそこのレストランおいしいよ」と言われるよりも「ミシュラン二つ星のレストランだよ」と言われた方が伝わりやすいですよね。
等級1~等級7|数字が大きいほどハイスペック
断熱等級は国土交通省が制定した品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)の中の「住宅性能表示制度」で規定されています。
要するに断熱等級は性能を見える化したものです。
以前は4段階で断熱等級を表していましたが、現在では等級1~等級7の7段階に分かれています。
国土交通省は断熱等級について次のように分類しています。
断熱等級 | 説明 |
---|---|
等級7 | 熱損失等のより著しい削減のための対策が講じられている |
等級6 | 熱損失等の著しい削減のための対策が講じられている |
等級5 | 熱損失等のより大きな削減のための対策が講じられている |
等級4 | 熱損失等の大きな削減のための対策が講じられている |
等級3 | 熱損失等の一定程度の削減のための対策が講じられている |
等級2 | 熱損失の小さな削減のための対策が講じられている |
等級1 | その他 |
なお、断熱等級の見直しは時代の変化とともに行われてきていましたが、断熱等級5〜7が新設されるのは23年ぶりだそうです。
断熱性能のみ基準が設けられ、今の断熱等級でいうところの等級2になります。
新省エネ基準
断熱性の基準強化(現在の断熱等級3)
次世代省エネ基準
さらに断熱性基準強化(現在の断熱等級4)に加え、日射遮蔽性も新基準に新設されました
H11省エネ基準に加え、一次エネルギー消費量の基準が新設されました。
H25省エネ基準との違いは冷房期の日射熱取得率基準の変更
等級が新設されるのは23年振りだったそうです。
断熱等級は外皮平均熱貫流率(Ua値)で決まる
断熱等級を決めるのは外皮平均熱貫流率で決まります。
もしかすると「Ua値(ゆーえーち)」と呼んだ方が馴染みはあるかもしれませんね。
Ua値は家の中の熱が外皮を伝ってどれくらい逃げるかを示す数値で、一言で「家の表面からどれだけ熱が逃げるか」を示す指標です。
屋根・外壁・床や基礎・窓
これらをひっくるめて外皮と呼びます。
Ua値(W/m2•K)=家全体の熱損失量(W/K)÷外皮面積(m2)
建物表面1m2あたり平均何Wの熱が逃げるのかを示すものになります。
Ua値が大きいと家から逃げる熱が多くなって暖冷房コストが増え、Ua値が小さいと家から逃げる熱が少なくなり暖冷房コストが少なく、エコな家になります。
高性能な断熱材|グラスウール以外は大幅コストUP
断熱材の種類は「繊維系」「発泡プラスチック系」「天然素材系」の断熱材がありますが、多くのビルダーで採用されているのは、
- グラスウール・ロックウールなどの繊維系断熱材
- スタイロフォーム・ネオマフォームなどの発泡プラスチック系断熱材
上記のいずれかがメジャーで、両者の特徴をまとめると・・・
繊維系断熱材と発泡プラスチック系断熱材の比較
- 断熱性能が高いのは発泡プラスチック系
- コストが低い方は繊維系
基礎断熱の家で、壁・天井の断熱材の厚みを同じ条件にしたときに
- 壁200mmグラスウール・天井300mmグラスウール
- 壁200mmネオマフォーム・天井300mmネオマフォーム
それぞれのビルダーによって仕入れの価格が違うと思いますが、コストの開きは倍以上になります。
ネオマフォームは性能が良いけど、その分コストも高いです。
費用対効果が良いのは断熱等級4から等級5|等級7はコスパが悪い
- 断熱性能を高める費用
- それに伴う暖冷房費の低減
この2つを比較することで費用対効果が分かります。
たとえば断熱性能を高めるのに100万円かかるけど、暖冷房費が年間4万円削減できるなら、実質25年くらいでコストを回収できます。
断熱性能を高めるのに200万円かかって、暖冷房費が年間5万円削減できる場合は、コストの回収期間は先ほどよりも長いスパンかかることになります。
実際に熱計算ソフトを用いてランニングコストの回収時期を計算してみると、
断熱等級6に性能UPする場合は25年から30年くらいで元が取れる計算となり、断熱等級7にする場合は50〜60年かかってようやくコストの回収が見込める計算になりました。
断熱等級|迷ったら等級5or等級6
- 最高等級の断熱等級7
- コスパ重視で断熱等級5・6
どの断熱等級で家を建てるかは建主次第になります。
高性能な家に住むのがステータス!
という人ならとことん上を目指して断熱等級7、
快適なら断熱レベルはそこまで要求しない。
断熱性能よりも他のことに予算を費やしたい。
そんな人なら断熱等級5or6で十分だと思います。
断熱等級が断熱レベルの指標となるものですが、あくまで使用する断熱材で計算した結果です。
断熱等級5でも断熱材の充填不良があれば性能としては断熱等級3レベルと言うこともあり得ますので、ビルダー選びは重要です。