生活空間を犠牲にしてまで収納部屋が必要ですか?収納が多い家はお金と広さの無駄使い
プランするときに良く言われるのが収納量について。
「たくさん」って・・・どれくらい?
なので僕たち設計士は具体的な広さを聞くことになるのですが、
こんな感じで、けっこう漠然としています。
周りの人やSNSの家づくり諸先輩たちに影響されていることも少なくありません。
これに対して住宅会社(設計士)は、
- 5畳分で足りるのかな?
- 10畳分でも足りないのかな?
「たくさん」と言っても、具体的な広さとしては人それぞれです。
でも後になって「あの住宅会社のプランは収納のことを全く考えてない!あの住宅会社はやめておけ!」
そんなクレーム(難癖)を付けられないように、(適当に)収納多めに計画しとけと考えがちです。
また、建主さん側としても
どれくらいで足りるかと聞かれても、広さをイメージできないことが多いでしょう。
なので住宅会社としても、建主さんとしても
「とにかく、収納はたっぷりあるに越したことはない」
ここに行き着きます。
とは言え、設計士である僕としては、闇雲に収納をたくさん設けるのはもったいないと思っています。
なぜなら「収納を広くする=生活空間が狭くなっている」からです。
そこで今回は「収納の考え方」について詳しくお話ししたいと思います。
この記事を書いている僕の簡単なプロフィール
- 2006年〜 注文住宅の設計・営業・現場管理
- 手がけた物件は100棟越え
- 2級建築士
必要な収納の広さは、持っている物の量で決まりますが「一般的にはこれくらい」という目安とあわせて詳しく解説します。
家づくりで後悔しない為には「自分自信で考える」ことが大切です。
ぜひ最後までお付き合い下さい。
家の大きさは上限がある|収納の優先順位
土地・建物・諸費用、家づくりにはたくさんのお金が必要です。
皆さんがいえづくりをするとき、その予算内に納まるように家づくりをしますよね。
家づくりに必要な費用についてはこちらに詳しく書いていますので、合わせてご覧ください。
注文住宅で家を建てる場合
- どの土地に建てるか
- どの住宅屋さんで建てるか
- 家の大きさをどれくらいにするか
これらによって費用が数百万円(下手したら数千万円)も変わってきます。
家は大きくなるほど建設費用は高くなる
建物にかかるコストは家の大きさに比例します。
大きければ大きいほど材料費・手間も増えるからという至ってシンプルな理由です。
ざっくり坪単価80万円の家だとすると、30坪で2400万円・40坪で3200万円です。
家の予算が2500万円とすると、自動的に家の大きさは30坪ちょっとになります。
満足する家ができるなら予算はいくらでも出します、なんて人はまぁいませんよね。
つまり予算の都合上、家の大きさには限度があるということです。
いくらでも予算はかけられる場合でも、
建蔽率や容積率・高さ制限など「建築基準法」による大きさの制限も定められています。
主に土地の大きさに対して建てられる家の大きさが決まります。
広い収納=生活空間が狭くなる
家は大きく、そして収納は広く!
マイホームの夢は膨らむ一方です。
とは言え予算には上限があります。
住宅ローン破綻だけは絶対に避けたいところ。
簡単に予算を上げてはいけません。
\借りすぎ注意!/
https://ii-ie-tukuru.com/hensai-turai/
限られた予算でどんな家づくりをするかが、その後の満足度に影響します。
その中で、あなたはこんな選択を迫られることになります。
- 生活空間の広さを優先して、収納の広さを抑えるか
- 収納の広さを優先して、生活空間の広さを抑えるか
もしあなたが「収納を広くする」なら、LDKなど「生活空間を狭くする」ことを選んだということになります。
家の大きさに制限がある中で、収納スペースと生活空間のどちらを優先するか
また、同じ予算で収納と生活空間のどちらを優先するか。
よく考えてみることが大事になります。
必要以上の収納=お金と広さの無駄遣い
それでもやっぱり収納は広いに越したことない!
でも、いざ物を入れるとスッカスカ。
そんなのはよくある話です。
広く計画しすぎた収納スペースは別の目的に利用することができたかもしれません。
- リビングを広くすることも
- 家事効率の良い動線にすることも
- 建設コストを安く抑えることも
将来に使うか使わないか分からない収納スペースは、お金とスペースの無駄使い以外の何者でもありません。
収納スペースを多く作るほど物が増える?
収納スペースがあるから物が増えていくのか。
隙間があれば埋めたくなるのが人間の心理。
心当たりある人も少なくないかもしれませんね。
「一応とっておこう」
「部屋余ってるからこれ買っちゃおう」
収納スペースがあるほど、どんどん物が増えていきます。
家づくりのキッカケで収納と生活空間の優先順位を決める
予算は限られてるし、家の大きさにも限りがある。
でも収納も大事で生活空間も大事!
- 収納が少なくて後悔した
- 生活空間が狭くて後悔した
そんな時は、家づくりのキッカケを思い出してみましょう。
- マイホームで家族の時間を大切にしたい
- 思い出の物が収納しきれず溢れている
①に当てはまるなら、収納よりも生活空間を充実させたいところ
②に当てはまるなら、生活空間よりも思い出の品を収納するスペースを確保したいところですね。
収納スペースの広さの目安と計画のポイント
参考までに、収納スペースの広さの目安と計画のポイントについて解説します。
収納スペースの目安|床面積×10~15%
住宅業界で一般的に言われている収納スペースの目安は、
床面積の10〜15%
と言われています。
収納の広さの目安
- 40坪の家なら4坪〜6坪(8畳〜12畳)
- 30坪の家なら3坪〜4,5坪(6畳〜9畳)
30坪の15%は4.5坪です。畳9枚分で約15m2という広さです。
家の大きさの参考(僕の実務経験上の広さ感覚)
夫婦+子供二人の4人家族の場合、家の大きさは30坪〜35坪くらい。
「4人家族+ゲストルーム」もしくは「5人家族」となれば35坪〜40坪程度がちょうど良い広さと思います。
僕が設計する時は、床面積の何%と考えるよりも次のことを考えて計画しています。
計画のポイント|収納スペース広さよりも場所が大事
収納スペースは広さよりも適切な場所に計画することの方が大切です。
- キッチンに収納するもの
- トイレに収納するもの
- 洗面所に収納するもの
- ユーティリティに収納するもの
広さ的には十分スペースがあったとしても、毎回階段を上ったり下りたりする収納は使い勝手悪く、不便なものになります。
洗濯洗剤はユーティリティにストックしておきたいし、歯ブラシとか髭剃りは洗面所にしまっておきたいですよね。
”隙間”収納で生活空間を有効活用
収納スペースと言っても、壁で囲って扉を付けて、収納室みたいに作る必要はありません。
工夫次第で色んなところに収納スペースを設けることができます。
おすすめしたいのが隙間空間を活用することです。
階段下収納でスペースを有効活用
お子様のいる家庭では土地の大きさや建ペイ率の制約から、2階建てで計画することが多いと思います。
階段下は収納スペースにはもってこいです。
今の家の階段は高齢者に優しい緩やかな階段になっているところがほとんどです。
段数で言うと15段前後、1段の高さは18cm前後になります。
高齢者に優しい階段 | |
蹴上(一段の高さ) | 18cm前後 |
踏面(一段の奥行) | 25cm前後 |
面積的には
- 踊り場の無いストレートな階段の場合は約2畳程度
- 踊り場のある折り返し階段の場合は約3畳程度
この2畳〜3畳程度を階段下収納として利用すれば、これだけで1坪くらいの収納スペースが確保できます。
階段下収納は階段4段目〜5段目くらいまでは高さが確保できないので、実質階段下収納として利用できるのは1.5畳程度分となります。
階段下収納として利用する場合は、階段の上り口側は天井高が低くなっているので、奥には背の低い物を収納することになります。
ニッチ収納はどこでも重宝する!
ちょっとした小物を置いたりするのに便利なのがニッチ収納です。
聞き馴染みのない言葉かもしれませんが、見たことある人は多いと思います。
これがニッチ収納です。
部屋同士の仕切り壁の一部を凹ませることで、ちょっとした棚として使えます。
洗面所のニッチは、
コップや歯ブラシを置いたり、髭剃りを置いたり
玄関のニッチは、
鍵とか財布を置いたり、郵便屋さん用に印鑑を置いたり
ニッチ収納の奥行きは一般的には約7〜8cm程度と浅めの棚ですが、意外と重宝することが多いです。
壁を凹ませて収納を作るので、部屋の面積を取ることなく有効活用できるのがメリットですね。
ニッチ収納にはちょっとしたデメリットがあるので、以下の点は注意が必要です。
- 壁厚が薄くなるので部屋同士の音漏れリスク
- 外壁面・耐力壁だとニッチ収納が作れない
基本的には、筋交が入ってる壁・耐力壁と表記されている壁には不可です。
ニッチ収納を作れる壁と作れない壁があるので、住宅屋さんに相談してみてください。
基礎断熱住宅は「床下」でたっぷり収納
基礎断熱住宅の場合は、床下も室内空間となります。
床下収納が使えると言っても取り出す時のことを考えるとあまり大量には置けませんが、部屋面積を犠牲にすることなくたっぷり収納できるのが床下収納の最大のメリットです。
収納より生活空間を広げて豊かに暮らそう|まとめ
今回のまとめに入ります。
収納は大事とはいえ、家の大きさに比例して建設コストは高くなります。
建設費用が高騰してきている昨今、限られた予算で家を建てるとなれば大きさも限られてしまいます。
家の予算がおおよそ30坪程度分だとして、収納に5坪使えば生活空間は25坪です。
将来物が増えるだろうから収納を広くたくさん計画しておこうなんてのは、お金も広さも無駄遣いしているようなものです。
住宅業界で一般的に言われている収納スペースの目安は、
床面積の10〜15%
と言われています。これを一つの目安にしてみてください。
収納の広さの目安
- 40坪の家なら4坪〜6坪(8畳〜12畳)
- 30坪の家なら3坪〜4,5坪(6畳〜9畳)
また、工夫次第で色んなところが収納スペースに使うことができます。
例えばデッドスペースになりがちな階段下・壁を凹ませたニッチ収納・床下も収納として活用できます。
これから家を建てる人は、何のために・誰のために家づくりをするかよく考え、生活空間と収納スペースのどちらを優先するかご自身で判断していただければと思います。
以上、最後までお付き合いいただきありがとうございます。