【氷柱(つらら)ができる家の特徴】断熱気密以外に小屋裏通気不足が原因
積雪地域に住んでいれば、小さい頃に家の軒先にある氷柱をもぎ取って勇者ごっこみたいに遊んだりしたものですよね。
小さい子にとっては遊び道具の氷柱でも、住人にとっては氷柱ができるのは勘弁してほしいところ。
氷柱の原因は屋根上の雪が溶けて滴になり、その滴が軒先で冷やされることです。
ネットの記事を見ると、氷柱の原因に断熱性能ばかりを取り上げています。
断熱性能が高ければ氷柱はできにくく、断熱性能が低ければ氷柱はできないと。
要するに屋根面が温まって雪が溶けるのは家の断熱性能が低いからということです。
ですが、
断熱性能が低いから氷柱ができるというのは、半分合ってて半分間違っています。
断熱性能が低くても氷柱はできない家もあれば、断熱性能が高くても氷柱ができる家もあります。
本記事では、氷柱ができる正しい原因と氷柱に悩んでいるあなたの家の建物性能は問題ないのかかについて解説したいと思います。
この記事はこんな僕が解説しています▼
- 2006年から注文住宅の会社に勤務
- 土地探しから間取提案、引渡しまで一貫した実務経験
- 営業、設計、現場監督をしている現役建築士
詳しいプロフィールはこちらからご覧ください!
「氷柱のできる家=欠陥住宅」ではありません。
詳しく解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。
氷柱ができる3つの原因
先ほどもご紹介したように、屋根の上の雪が溶けてその滴(しずく)が軒先で冷やされることが氷柱の発生条件です。
なので屋根の上の雪が溶けなければそもそも氷柱は発生しません。
ではなぜ屋根の上の雪が溶けるのかというと次の3つが原因です。
- 断熱性能が低い
- 気密性能が低い
- 小屋裏の通気不足
詳しく解説します。
断熱性能が低い
断熱材を挟んだこっち側とあっち側の熱の移動を、断熱性能と言います。
壁で仕切られた部屋同士で、一方の部屋でストーブをガンガン炊いた場合、壁の断熱性能が低ければストーブを炊いた部屋の隣の部屋もガンガン暖かくなります。
つまり断熱性能が低ければ熱が移動するということです。
断熱性能が低いと天井から熱が逃げて、その結果として屋根面が暖められるということです。
屋根面が暖められると屋根の上の雪が溶けて、その滴が軒先で冷やされ氷柱になります。
反対に、断熱性能が高ければ天井から熱が逃げないから氷柱もできないよっていうのが、よく言われていることですね。
気密性能が低い
気密性能は中と外の空気の行き来のしやすさを表します。
誰かと話していて「息くさいなこの人」と思ってても
マスクをしながら話せば匂いは伝わってきません。
それと似たような感じです。
気密性能が高ければ中と外の空気が行き来しにくくなり、気密性能が低ければ隙間だらけで空気が通り放題です。
気密性の低い住宅は室内の暖かい空気が天井から抜けていき屋根面の雪を溶かしてその滴が軒先で冷やされ氷柱になります。
断熱と気密は表裏一体で、断熱が良くても気密が悪ければNGで逆も然りです。
氷柱ができる原因として、断熱・気密の2点だけで話をしている人が多いですね。
小屋裏の通気不足
断熱性能が高くても熱は逃げます。完全に熱の移動を断つことはなかなか難しいです。
高性能と言われている家でも、熱の移動はどうしても発生します。
日本の道路を走るのに時速300kmのF1カーはオーバースペックですよね。
無暖房住宅はありますが、現実問題そこまでコストをかける人は少ないです。
それよりも家を大きくしたい、水廻りをグレードアップしたいと思いますもんね。
少なからず熱の移動が発生してしまうからこそ大事なのが空気層。
屋根材と断熱材の間に外気が流れるトンネルみたいなものがあり、それを通気層と言います。
室内の暖かい空気が天井から漏れ出ても空気層があることでそのまま外に排出されます。
この空気層がないとそのまま屋根面を暖めることになり、溶けた雪が滴になり軒先で氷柱になります。
空気層を設けていたとしても、外に排出しきれなければ通気不足で屋根面を暖めてしまい氷柱ができます。
小屋裏に空気層を設けるのが氷柱対策に効果的です。
小屋裏通気が機能していれば氷柱はできない
高断熱高気密は家の快適性という意味でも必須性能ですが、こと氷柱においては高断熱高気密よりも、もっと大事なことが小屋裏通気の確保です。
室内の暖かい空気が天井から逃げてしまっても、小屋裏通気によって暖かい空気を外に排出できれば屋根面が暖められることはありません。
屋根面が暖まらなければ雪が溶けないので氷柱ができないということです。
屋根面が暖まらない
屋根上の雪が溶けない
氷柱ができない
いくら高気密高断熱と言っても、必ずと言っていいほど熱は逃げてしまいます。
氷柱ができないほど断熱を厚くするとなれば、材料費と手間代でコストがかかりすぎてコスパ悪すぎるので、実際のところ断熱・気密・小屋裏換気で氷柱ができにくいような施工を採用します。
性能が良くても氷柱はできる
高断熱・高気密・小屋裏通気の確保、これで屋根面が暖められることはありません。氷柱対策は完璧です。
ところが住宅性能を高めて屋根上の雪を溶かさないことができても、ぜったいに氷柱ができないわけではありません。
太陽熱で屋根の上の雪が溶けるからです。
これはもはや建物の性能は関係ありません。
いくら建物の性能が高くても太陽の熱で雪が溶けてしまえば氷柱はできます。
氷柱ができる=家の性能が悪い
ではありません。
もはやできる対策としては屋根の上の雪をためないことしか方法はありません。
氷柱の大きさで性能の良し悪しが分かる
太陽熱で屋根上の雪が溶けて氷柱になる場合、日当たりの良い面に氷柱ができやすいという特徴があります。
日当たりの悪い北側などの軒先には氷柱ができにくかったりもするので、南側・西側など部分的に氷柱ができているなら太陽熱で氷柱ができているという解釈でOK!
冬は太陽高度が低いので北側には陽が当たりにくいです。
- 方角関係なしに全体的に氷柱ができる
- 天候関係なしに氷柱ができる
- 曇天の日中でも屋根から水滴が滴り落ちてる
- 日に日に氷柱が大きくなっていく
これらは建物性能が悪いことが原因で氷柱ができている可能性が高いです。
断熱・気密・通気が確保されていれば、屋根上の雪が溶ける原因は太陽熱だけです。
まとめ|氷柱(つらら)ができる家の特徴
氷柱ができる原因は、屋根の上の雪が溶けて滴になり、その滴が軒先で冷やされることで氷柱になります。
つまり屋根の上の雪が溶けなければ氷柱はできません。
屋根の雪が溶ける原因は3つあります。
- 断熱性能が低い
- 気密性能が低い
- 小屋裏の通気不足
氷柱対策という面だけで言えば、高断熱・高気密よりも小屋裏の通気を確保することが大事です。
室内の暖かい空気が天井から逃げてしまっても、小屋裏通気によって暖かい空気を外に排出で切れば屋根面が暖められることはありません。
建物性能が高くても小屋裏の通気が取れていなければ氷柱ができることはあるし、
建物性能が低くくても小屋裏の通気が取れていれば氷柱ができることはありません。
しかし屋根面を暖めずとも、氷柱ができることはあります。
それは太陽熱で屋根の上の雪が溶けるからです。これはもはや建物の性能は関係ありません。
以上、最後まで読んでいただきありがとうございました。